パーサーが聞いた!駅弁製造現場に迫るこだわりの数々

新幹線で過ごす時間を彩り豊かなものにしてくれる「駅弁」。ジェイアール東海パッセンジャーズでは、こだわりの料理の数々をつめた、バラエティ豊かなお弁当を、開発から製造、販売まで一貫して行なっています。

今回は、普段新幹線車内で駅弁を販売する立場のパーサー2人が、駅弁の製造や品質管理に携わる社員にインタビューを実施。駅弁製造にこめられたこだわりの数々と、おいしさの理由を聞きました。

<パーサー>佐野 文香さん

2009年入社。チーフパーサーとして主にグリーン車業務などを担当。趣味は海外旅行で、コロナ禍が落ち着いたらフランス南西部やスペインに訪れたいと思っている。

<パーサー>下別府 彩華さん

2012年入社。チーフパーサーとして主にグリーン車業務などを担当。趣味はカフェ巡りで、休日は自分で歩いて見つけたカフェに入ってのんびりと過ごすのが好き。

<食品製造部> 高柳 恕子さん

2019年入社。食品製造部の開発チームに所属し、新商品のメニュー開発、既存商品の改良検討、工場での製造に向けたレシピ作成などに携わる。

<品質管理室> 平田 麗奈さん

2019年入社。品質管理担当者として、安心・安全なお弁当づくりのための細菌検査や工場・店舗の衛生管理、従業員の衛生教育などに携わる。

1. 厳しい検査・検討を乗り越えて生まれる駅弁たち

佐野さん

今日はよろしくお願いいたします! さっそくですが、当社が開発・販売しているお弁当はどうやって生まれているのでしょうか?

高柳さん

まずは、どんなテーマのお弁当にするか、といったコンセプトが決まり、その後開発担当者が食材や包材(お弁当の容器)の選定などを行います。

平田さん

食材は、私たち品質管理室で細菌検査の実施や、食品メーカーから取り寄せた食材ごとの商品規格書を細かく確認し、安心・安全なものを選定していきます。食材が決まったら、開発チームでお弁当の内容や盛り付け方、価格などが検討され、試作を行い、品質管理室では細菌検査などの品質チェックを実施します。

高柳さん

お弁当としてほぼ形になった段階で、ようやく経営幹部に試食をしてもらいます。それで販売できるとなったら、工場のラインで実際の製造工程を試していきます。

平田さん

工場で、実際に商品として製造する体制が整ったら、その段階でさらに外部の検査機関に 細菌検査を依頼します。 それに合格し、ラベルに記載する原材料表示等を整えて、やっと商品としてのお弁当ができあがります。食材の検査・選定、試作段階での細菌検査、製品としての外部機関による検査……と、何段階にも厳しい検査を乗り越えてお弁当が生まれるんです。

下別府さん

安心・安全なお弁当を届けるために、厳しいチェックが重ねられているのですね。

平田さん

新幹線という乗り物の中で、たくさんの方が召し上がるものなので、かなり厳しい自社衛生管理基準で検査を行なっています。東京、名古屋、大阪にあるそれぞれの工場でも、JFS-B規格という食品安全規格の認証を受けており、徹底した衛生管理のもと、お弁当を製造しています。

高柳さん

それと、当社が開発・製造しているお弁当は、新幹線車内での販売以外にも、駅構内の売店でも買うことができます。販売する環境が変わると、保管環境なども変わってくるため、その都度条件を変えて検査を行い、消費期限を設定しているのも当社ならではのことかもしれません。

佐野さん

新幹線の中で販売する際は、大きな冷蔵庫などはないので、蓄冷剤を使ってお弁当を管理しています。

平田さん

そうですよね。新幹線の場合は特に温度管理などが難しいため、条件が厳しくなりますね。

高柳さん

新幹線で販売するお弁当の数に制限があったり、売店で購入できる商品とラインナップが異なったりするのも、そのためです。

2. セントラルキッチンで調理後、各工場で仕上げ

下別府さん

お弁当の製造は、どんな流れで行われているのでしょうか?

高柳さん

当社には、東京、名古屋、大阪の3つの工場がありますが、ひとつひとつの食材の加熱調理はセントラルキッチンとしての役割を持つ名古屋工場で行なっています。最近、当社では真空調理という方法を導入しまして、真空調理による加熱後、真空パックのまま急速冷凍して一時保管します。その後、冷凍状態の加熱済み食材が各工場に届けられ、盛り付けと出荷を行います。

佐野さん

加熱調理はセントラルキッチンである名古屋工場、お弁当として容器につめて、仕上げる工程は各工場で行われるというイメージですね。

高柳さん

そのとおりです。ごはんは東京と大阪の工場でも炊ける設備があるので、それぞれで炊いたものを入れています。ちなみに、各工場で使用するお米の品種を変えたりもしているんですよ。

佐野さん

そうだったのですね。以前は、煮物などの味付けにも関西風と関東風で違いがあったと聞いたことがあります(※現在は品目ごとのベストな味付けを再検討し統一されている)。

下別府さん

容器に盛り付ける工程は、手作業なんですか?

高柳さん

はい、手作業です。始発から駅を利用されるお客様にお弁当をお届けするために、盛り付け作業は深夜に行われています。

3. 真空調理で、品質の安定とさらなるおいしさを実現

佐野さん

さきほど、真空調理によって食材が加熱されているとお話がありました。真空調理について、詳しく教えていただけますか?

高柳さん

食材を袋に入れて真空パックし、真空調理機で自動調理を行なっています。機械には、食材ごとに真空の度合いや加熱時間などを、我々が作成したレシピに基づき細かく設定していて、ベストな加熱時間がとられています。

佐野さん

真空調理によって、おいしさにはどんなメリットがあるのでしょうか?

高柳さん

たとえば焼き魚を調理する際、あらかじめ焼き目だけ付けておき、それをさらに真空調理することで、ふっくらとジューシーな仕上がりになります。焼き工程と真空調理を組み合わせることによって、食材の乾燥を防ぐことができるようになりました。

下別府さん

表面だけこんがり焼いて、そのあと真空調理で中までじっくりと火を通せるというわけですね。

高柳さん

そういうことです。あとは、煮物も味の浸み込みもよくなります。ちなみに煮物の味付けは真空調理になったことを機に改良されていて、化学調味料は使用せず、カツオエキスや昆布エキスによる出汁を使っています。なるべく自然に近い、やさしい味わいに仕上がるように、煮物のレシピを変更しました。

佐野さん

煮物には、里芋などのやわらかい食材も使われているかと思うのですが、真空にしてしまって、型崩れとかはないんですか? 真空といえば、ぺったんこになるようなイメージがあるので。いつもお弁当のおかずはきれいな形なので、そのあたりも試行錯誤されたのかなと思いました。

高柳さん

そうですね、食材によって真空の度合い、たとえば70%空気を抜きます、90%空気を抜きます……といったように、食材によって調整しています。レシピ開発の段階で、型崩れの検証なども行いながら、それぞれの食材にとってベストな数値を検討し、そのレシピを機械に設定しているんです。真空調理の導入によって、以前と比べてかなり自動化が進みましたが、最適なレシピにたどり着くまでにはかなりの試行錯誤が求められますね。

下別府さん

自動化が進んだことによるメリットも、あったりするのでしょうか?

高柳さん

味の統一を徹底できるようになりました。手作業で加熱調理を行うと、どうしても作業者によって差が出てきてしまうことがありましたので。人の手による作業が減ったぶん、繁忙期・閑散期などの影響も受けにくくなりました。ひとつのセントラルキッチンで、機械によって加熱調理をすることで、味と品質の安定化につながっていると感じます。

平田さん

品質管理の視点でも、真空調理に変わってから、例えば人が直接食材に触れる機会が減ったので、二次汚染などのリスク低減にも繋がりました。あとは、品質を保持したまま一定期間冷凍保存できるのが真空調理の大きなメリットではないでしょうか。

4. 急速冷凍と、ていねいな解凍

佐野さん

各工場で仕上げの工程にとりかかる際は、真空パックから取り出してどんどん盛り付けていくのですか?

高柳さん

真空調理後は急速冷凍によっておいしさをキープしていますが、解凍の仕方にもコツがあるんです。急に解凍すると水分が出て味や食感が落ちてしまうので、冷蔵庫内でゆっくりと解凍するのですが、冷蔵庫内での置き場所や並べ方にも気を配り、均等に解けるよう工夫しています。

下別府さん

家で食材を解凍するときは、深く考えずに積み重ねてしまうのですが、ここではお客さまのもとに出すものなので、解凍という一見さりげない工程にも、細かな気遣いが散りばめられているのですね。

高柳さん

あまりに積み重ねすぎると解凍ムラができてしまったり、下の方や中のほうが解凍されていなくて、外側だけべちゃべちゃ……といったことが起こりうるので。均一に広げたり、冷蔵庫内の温度をきちんと保つことに気を配っています。あとは、汁切りも重要になってきます。お弁当は特に汁気の微妙な違いによって、べちゃっとなってしまうことがあるので、こちらも特に気を使っているポイントですね。

佐野さん

お弁当は特に汁気の微妙な違いがおいしさに影響しますもんね。

高柳さん

そうなんです。一度冷凍したものを解凍すると、どうしても水分が出てくるので、解凍して袋から開けたあとも、ホテルパンという大きいバットに穴が開いたものに移し替えて、2時間ほど汁切りをするものもあります。

パーサーの間で人気のお弁当は?

高柳さん

お二人は、いつも車内でお弁当を販売される際に、お客さまにどんなおすすめをされているんですか?

佐野さん

お弁当各種の写真が載ったポップをお客さまにお見せしています。悩まれている方がいらっしゃったら、私自身が食べたときの感想やおすすめポイントをお伝えするようにしています。なかでも「東海道新幹線弁当」は、お値段もお手頃ですし、煮物や味噌カツ、エビフライ、深川めしなど非常にバラエティに富んでいるので、おすすめしやすいと感じています。実際に、お客さまに選んでいただくことも多いですね。

下別府さん

私は、お客さまに呼び止められたときは、まずはお客さまの印象によって、好まれそうなものをおすすめしています。駅弁の場合は、どうしてもパッケージの外から中が見えないので、私もなるべくイメージを伝えるように心がけていますね。

高柳さん

そうなんですね。ちなみに、お二人がこれまで食べた中で、個人的にお気に入りのお弁当はありますか?

佐野さん

季節のお弁当とかも結構好きですね。少し前の話ですが、「冬の大漁御膳」は、パーサーの間でも取り合いになっていました(笑)。「品川貝づくし」も社員の間で人気がある印象です。

下別府さん

「貝づくし」は、車内販売でも人気ですよね。甘辛い味付けのさまざまな貝がご飯に乗っていて、食べごたえがあります。お客さまからは、お酒にも合うといった声をいただくこともありますね。私個人としては、「日本橋 幕之内」もお気に入りです。蓋を開けると大きな焼き鮭が乗っていて、インパクトがすごいですよね。

佐野さん

あれは本当に立派な鮭ですよね。駅弁であんなに大きな焼き魚が乗っているなんて、珍しい気がします。それと、日本橋幕之内に入っている梅干しも、おいしいと話題です。

高柳さん

この焼き鮭も、真空調理でふっくらと仕上げています。梅干しは紀州南高梅です。

下別府さん

ほかにも、イチオシのおかずはあるんですか?

高柳さん

揚げ物も人気ですね。厚切りロースとんかつ弁当などもおすすめです。200gの大きなカツが乗っていて、インパクトがあります。近々、改良版が発売されるので、衣のサクサク感がさらにアップする予定です。このように、既存のお弁当の改良や、新商品の開発もどんどん進んでいるので、これからもより一層おいしいお弁当をお届けできればと思います。

佐野さん

同じ会社にいても業務内容がぜんぜん違っていて、今日は初めて知ることがたくさんありました。みなさんの思いのつまったお弁当を私たちが車内で販売しているということを再認識させられました。ありがとうございます。

下別府さん

本当に、厳しい条件を乗り越えたり、調理方法にもこだわられていたり。おいしさの理由を知ることができたように思います。駅弁ってすごくきれいで、蓋を開けたときのワクワク感が大きく、私も大好きです。今日伺ったお話を、車内でお客さまにおすすめする際に活かしていきたいと思います。ありがとうございました。