インストラクターに聞く!東海道新幹線のパーサーの、好感を抱かれる笑顔や振る舞いの作り方

きりりとした制服姿や輝く笑顔がまぶしい、東海道新幹線のパーサーたち。仕事ぶりだけではなく、丁寧な物腰や言葉づかい、制服の着こなしも注目の的です。パーサー歴14年、現在はインストラクターとしてパーサーの教育に携わる奥野麻衣さんに、パーサーが普段から心掛けている身だしなみや所作の極意を教えてもらいました!

パーサーたちの丁寧な所作や表情は、すべてはお客様からの信頼をいただくため

東海道新幹線にご乗車の際、制服姿で車内サービスに従事するパーサーを見かけたことがあると思います。凛々しい制帽姿や、女性なら首元にスカーフでアクセントをつけた装いは、華やかかつ清潔感があり、颯爽としています。周囲に与えるインパクトは大きいようで、制服姿や笑顔、丁寧な接客に憧れ、パーサーになったという人も少なくありません。パーサーの振る舞いに対し、お客様からおほめの言葉をいただくことも多いんですよ。

パーサーにとって言葉づかいや表情、身だしなみはとても大切です。なぜかというと、旅が快適だと感じていただけるよう、お客様に信頼感や好感を持っていただく必要があるからです。信頼とはどこから生まれるのだろう?と考えてみてください。新幹線乗車中、お客様がパーサーの助けを必要とするのは、車内販売の利用や、質問などをする場合です。そんなときはきちんとした印象の人や、にこやかな人だと声を掛けやすいですよね。私たちが表情や言葉づかい、そして身だしなみにも気を配っているのは、そうしたことが大きな理由なんです。

当社の掲げる接客5原則は「身だしなみ」「表情」「態度」「言葉づかい」「挨拶」です。お客様に信頼感や好感を持って頂ける態度や雰囲気を身につけるため、新入社員研修でしっかり学んでいきます。しかし、これらはパーサーだけの特別な教育というわけではなく、接客の仕事をする人なら誰でも大事にすべき基本です。どんな部分を意識すればパーサーのようにエレガントな動きができるのか、ちょっとしたコツをご紹介しましょう。

好印象の決め手・笑顔を作る基本の「い」

接客の基本は、アイコンタクトです。販売でも、車掌業務でも、お客様とアイコンタクトを取ることからすべてが始まります。そしてその次のステップとして、第一印象を決めるのは、なんといっても笑顔です。もう一度新幹線に乗りたいと思っていただけるかどうか、ファーストコンタクトにかかっているという想いを常に持ち、私たちはお客様に笑顔で向かい合います。

人が好きでこの仕事を選んでいる人が多いため、接客では自然に笑顔がこぼれますが、笑顔の作り方にもコツがあります。ポイントは、最後が「い」で終わる言葉にあります。「あおい」「とうかい」「おいしい」など、最後が「い」で終わる言葉を発すると、口角がきゅっと上がります。これをしっかりと練習し、身につけるといつでもいい笑顔になります。もちろん目も笑っていることが大事なので、鏡で自分の顔を確認したり、同期に見てもらうなどして練習を重ねます。秘訣は、楽しいことを考えて表情を作ること。マスクを通しての接客でも、広角と目を意識して笑顔をしっかり作れば、マスク越しでも笑顔がお客様に伝わり、会話がはずむんです。

きれいに立つからこそ、きれいなお辞儀やウォーキングができる

車内巡回や重いワゴンを押しながらの車内販売など、揺れる新幹線でもパーサーはふらつくことなく、新幹線内を移動しています。日々の慣れもありますが、実はこれもきちんとした姿勢を身に着けているからこそ、できるワザです。

どうすればきれいに歩けるのか、そのすべての基本は立ち姿にあります。きれいに立てているからこそ、きれいに歩くことが叶い、エレガントに見えます。意識するのは体幹です。お腹にしっかり力を入れ、頭の上から吊られているように、真っ直ぐに軸を保って立ちます。その姿勢のまま、足を前に出していくと、自然と歩き方もきれいになります。最近はスマートフォンなどの影響で猫背や顎が前に出てしまいがちなのですが、そこも注意したいです。新人のうちは新幹線の揺れでフラフラしそうになりますが、軸を意識して歩くことを身につけると、たとえ重いワゴンを押していてもそんな不安はなくなります。

お辞儀も同様です。お客様とすれ違う際の会釈は15度、客室への入退室時やお客様をお出迎え・お見送りする際のグリーティングは30度、謝罪時には45度という角度の決まりがあります。これをきれいに行うのも、基本の立ち姿があってこそ。立ち姿の基本を意識し、腰を倒していくときれいなお辞儀ができます。

身についた所作やしゃべり方は、日常生活でほめられることも

車内の騒音で声がかき消されないよう、普段よりも少し声を大きくすること、早口にならないようにゆっくり伝えるといったことも大切です。身だしなみでは細かな規定があり、清潔で上品に整えることが基本ですが、女性の場合は6種類のスカーフで個性を出すのがちょっとした楽しみでもあります。マニュアルにもある約10種類の結び方のほか、パーサーオリジナルもあり、顔周りを明るく彩ってくれる大事なアイテムです。

ここまで接客における所作や笑顔の基本についてお話してきましたが、いかがでしたか?新入社員研修では細かなことを学び、おもてなしのプロフェッショナルへと育っていきますが、これらの振る舞いは、日頃の生活でも活かせることがたくさんあります。私自身、友人から言葉づかいや身だしなみをほめられることがありますが、仕事以外の場でも好感を持ってもらえているんだと思うと、うれしくなります。初対面の相手に話しやすいと思ってもらったり、ものを拾うようなちょっとした所作も美しいと言われたりするパーサーもいるようです。何より、相手に何かを伝えるときに、納得していただきやすい話し方や伝え方ができることで、信頼関係を築きやすいと思います。

東海道新幹線にご乗車の際は、パーサーの所作や身だしなみにも目を留めていただくと、私のお話に納得していただけると思います。そして、新幹線にご乗車の際には、ぜひ気軽にパーサーにお声掛けください。最高の笑顔で、お客様の元にお伺いします。